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まずは手榴弾(ハンドグレネード)入門なのだッ!!(原理編)

「手榴弾はシュリュウダンではなく、テリュウダンと読みます。」
と、大昔のタミヤニュース「覚書ドイツ軍」で高荷義之先生が語っておられた!ちなみに、自衛隊では
手投げ弾らしい。手で持って投げつける爆薬、というのは大昔からある。それこそ元寇時の「てつはう」
(テッポウ、震天雷)やら、ドイツの「擲弾兵」(第二次大戦のそれではない、ナポレオンの時代のそれ)
が使う擲弾のような、導火線に火をつけて投げる不安定で危険なシロモノだがな。

そんな大昔の黒色火薬(花火とかでおなじみ)の不安定なシロモノとちがい、現代の爆薬は
たいてい、ショックを与える程度では爆発せんのである!有名な「プラスチック爆薬」にいたっては
火にくべたって燃焼するだけで爆発したりはせんのだッ!!あ、「ワイルド7」と「バットマン・
ダークナイトリターンズ」で銃弾が当たってプラスチック爆弾が爆発する描写があるが、
大間違いだ!!
マネしないように、ギャグ漫画以外では。では、爆発させるのに必要なものは何か?とゆーと、
信管(ヒューズ)
であるッ!!これなしでは、いかなる爆薬も「兵器」として実用することは困難であるッ!
これは、「必要な時に爆発」させるための物で、砲弾だろうが爆弾だろうが機雷だろうが爆雷だろうが
地雷だろうが擲弾だろうがこの手榴弾だろうが、いろいろな方式のものが必ず付いている。

さて、手榴弾の信管、というと、映画やドラマなどでパイナップル型の物からリング付きのピンを
引っこ抜く、という動作はお馴染みだな。では、なぜピンを抜くと数秒後に爆発するのか?

・ピンが抑えていたスプリングが作動、「撃鉄」(ストライカー)が雷管を打撃、そして
発した火花が延期薬に点火、約4秒で発火薬に達し、最後に炸薬に引火して爆発!!
この方式は「ネズミとり式」といい、フランスが第一次大戦で使用した「F1型」手榴弾から
始まる。有名なアメリカの「パイナップル」ことMk.2や、ロシアのF1、イギリスのミルズなど
世界標準の方式で、もちろん現在も多用されている。なお、ピンが抑えているスプリングは
外側の「クリップ」を握っていると解除されないので、これが外れないかぎりピンを抜いても
爆発せず、ピンをもどすか、針金やヘアピンなどを代わりに差し込めば大丈夫。
クリップごと握ったまま投げれば、スプリングが作動するときクリップも外れて点火。
近くに引き付けた敵に投げるときは、投げる前にクリップを飛ばして点火後、投擲。

 
これはアリイ(旧LSが開発)の1/1スケールのMk.2(左)M67(右)プラモ。

現在使用されているのはM67の方で、今時Mk.2は映画や漫画にしか出てこない
代物だが、「手榴弾」と聞いて真っ先に思い出す形はやはり「パイナップル」。

ちなみにM67は「アップル」または「ベースボール」と呼ばれるらしい。

Mk.2の表面の凸凹は、爆発時に破片が適度な殺傷力を持つサイズになるように

考えられたが、実際は表面を凸凹にしても効果がなく、M67などでは中に硬質鉄線が
仕込まれており、これが飛び散って殺傷するようになった。


2・スプリングとクリップのないタイプ。金属リングではなく短い紐に繋がったピンを抜き、
ストライカーの代わりに自分で何か硬い物(ヘルメットなど)に信管を叩きつけ、点火。
日本軍がこの方式。ワンアクション遅くなり、点火してから投げるので狙う時間に余裕がない。
旧式で不便。実際、このため一瞬の差があだになって戦死した日本兵、逆に助かった
米海兵隊員もいる。アダプターを付けて擲弾筒(グレネードランチャー)から発射が可能。

日本の九七式(左)より小型の九九式(右)、どちらも外国製に比べ 炸薬が少なく、威力が小さい。
どうも、日本軍の手榴弾は突撃の際の景気づけの爆竹といった感がある。形が円筒形なのは、擲弾筒
(グレネードランチャー)から発射できるようにするため。

 
 
で、これ以外にももう一つ、「摩擦発火方式」とゆーのがあるぞ。おなじみの
「ポテトマッシャー」ドイツ軍柄付きおよび卵型手榴弾がそれだ。


3・摩擦発火方式。なぜか旧ドイツ軍は、これにこだわった。握り玉付きの紐を引くとマッチを
擦るように導火線に点火する。鳥山明作品では「Dr.スランプ」のころは紐を引くだけだったが、
「ドラゴンボール」では引き抜く、というより正しい描写に。アリイの1/1スケールのプラモが
いい資料になる。こっちでも紐は引き抜けないが、抜くと戻せないのでこうなってるだけだ。
間違えないように。なお、この信管、対戦車地雷や固形爆薬などにセットして投げつける
こともでき、非常に応用の利く物であったが、ドイツの敗北と共に消滅。
あ、ドイツ風の棒型手榴弾の描写で、宮崎駿監督作品だと紐でなくピンを抜くカットが
あるが、あれはフィクションであり実在しない。リアルを自称する漫画では描かないこと。

 
(左)柄付き手榴弾M24。(Steilhandgranate24)遠投しやすく、炸薬量が多い。
底の薬ビンの蓋のようなキャップを回して外し、紐を引き出しで使う。

(右)卵型手榴弾M39。(Eierhandgranate39)柄付き同様に摩擦発火式信管。
青いところを回して外し、紐を引き抜く。どちらもやはりプラモの写真。

 

あとこの他に、ピンを抜いた後に投げて地面に接触した瞬間爆発するタイプもある。
現代の「電気衝撃式」(外見がM67とそっくりなM68)があるが、ちと資料がなく、
詳しく解説できない!だが、安全のため、手から取り落とした程度の衝撃では
爆発せず、ある程度の高さに放り投げる必要がある。他、大戦中のイタリア軍の手榴弾
「赤い悪魔」も安全ピンを抜いたあと、衝撃を与えるとストライカーが発火薬を直撃、
爆発するが、そのおっかない名前はやたら点火が不安定なのと色から付けられたと
いう欠陥品であった。代表的な3種とも、どれもこれもダメダメなので、漫画では出番がない。

ところで、着発式以外の信管を改造、延期薬部分をカットすると、発火した瞬間に
爆発する。もちろんブービートラップ用だ。ただし、丁寧に作業しないと爆発の危険あり。
卵型でキャップが青でなく赤のものは最初からブービートラップ用で、撤退のとき
わざと捨てていって、敵に拾わせて投げさせる・・・もちろん投げる前に爆発、
という、実に陰険なトラップだ。現地改造で、青のまま機能は赤、という物も。

と、ゆーわけで、「なぜ、どうすれば」爆発するか、は解ったと思う!!
次回は「威力」と「応用」についての教練であるッ!!!





まずは手榴弾(ハンドグレネード)入門なのだッ!!(応用編)

そもそも、手榴弾という物は、破片を撒き散らして敵兵を切り裂いて殺傷するのが基本。
したがって、装甲板で覆われた戦車や装甲車に対しては、開いているハッチから投げ込んで
中の乗員を殺すか、専用の「対戦車手榴弾」で装甲を破壊しなければ役にたたんのである。

対戦車手榴弾という物は、実戦では大戦中に開発されたドイツ製と旧ソ連製が使われている。
ホローチャージ弾頭(発見した人の名をとってモンロー効果、またはノイマン効果ともいう原理)で
爆発の圧力を一点に集中させ、溶解した高熱の金属(メタルジェット)で装甲を打ち破る方式なので、
その延長線上に乗員か燃料、弾薬がないと、決定的な打撃は与えられない。
ちなみに、昔は高熱で装甲を溶かして貫通、という認識だったが、これは誤りである。

弾頭の真上が装甲に対し直角に当たらないと、効果を最大に発揮できないため、これらの
手榴弾は一様に柄付きで、投げると弾頭と柄の間が布でつながって伸びたり、傘状の物が
少し開いたりして、回転せずに命中するようになっている。

「単に火薬量が多い」だけの自称「対戦車」もあるが、これだと戦車の弱点を狙って
投げつけないと効果は薄い。例えば、イギリスが戦時中急遽作り上げた、
「とりもちのついた紙で覆われたニトログリセリン入りのガラスのフラスコ」
としか言いようのないNo.74「スティッキー」手榴弾などという変り種もある。

また、装甲を打ち破るのではなく、目潰しとして使う特殊手榴弾もある。
やはり大戦中のドイツの「H2」(見た目が電球そっくり)、これらは化学反応で閃光を発し、
乗員の視力を奪い、直後に煙を発する。また白燐を使ったイギリスの「No.76」
(見た目ただのガラス瓶)などは、発火、発煙、車内に流れ込むと乗員への火傷を期待できる。
(戦車用の砲弾として白燐を使ったものもあり、敵戦車を炎上させた例もある)
もっとも、このへんの手榴弾は緊急用であり、一時しのぎの代用兵器ではあるが。

現地改造として「収束装薬」という物がある。前述のドイツの棒型手榴弾の弾頭を
6個取り外し、これを別の棒型手榴弾の弾頭の周りに針金などで縛りつける、
威力7倍の恐ろしい魔改造である。これでも装甲は打ちぬけないので、キャタピラや
エンジングリルなどの弱点部に投擲して、行動不能にするのが精一杯である。
むしろ、威力7倍なので、使う方が隠れる場所がないと危険であるので要注意。

このような対戦車手榴弾は、現代の先進国軍隊では全く使われていない。
と、いうのも、これら肉薄攻撃兵器よりもずっと安全で効果的な飛び道具があるし、
装甲車はともかく、主力戦車の複合装甲やリアクティヴ装甲には
全く通用しないからである。(火炎瓶も同様)

と、いうわけで対戦車戦闘における手榴弾についてのまとめ。
1・普通の手榴弾では戦車の装甲を打ち破れない。
開いたハッチから投げこまなければ効果がない。
2・いくつもまとめて使っても、急所を狙わなくてはならない。
3・現代の主力戦車に対しては、ほとんど効果がない。
さらに加えると
4・手榴弾での対戦車戦闘は決死攻撃である。
歩兵の支援のついた戦車を破壊するのは困難である。
と、いうのもある。戦車の視界の狭さは歩兵にとり有利ではあるが、
それをカバーする敵歩兵が付くと、難易度が急激にアップするのだ。したがって、
射程に入るまで完全に身を隠せる場所が必要となる。もっとも、
それらしい障害物を砲撃で吹き飛ばしながら前進する慎重な戦車長もいるのだ。

最後に対人手榴弾の威力について。前述のとおり、対人用は爆風でその弾片を撒き散らし
人間を切り裂いて殺傷するわけで、その有効半径は型にもよるが10〜20Mくらい。
しかし、地表で爆発した場合、弾片は真上や斜め上に飛び散るため、3M以上離れて
ピッタリ地面に伏せると無事で済む。漫画や映画だと、手榴弾にやられて跡形も無く吹き飛んだり
火達磨になったりもするが、対人用ではそんなことにはならない。燃えるのは焼夷手榴弾、
至近での爆発で体がちぎれることがあっても、消し飛ぶことはない。つまり、演出だ。
そういえば、仲間を救うため手榴弾に覆いかぶさり、弾片を一身に受けて名誉の戦死、
ってのも漫画などであるが、これは実際にやった偉いやつがいるので、効果はあるようだ。
あと、映画と違い点火してから3〜4秒で爆発するので、投げ返すのは無理。伏せろ!

このように、手榴弾は目的別に効果や使い方に違いがあるのだ。漫画に描く場合、
演出や絵的に面白いものを使うのは一つの正解だが、構造や効果を知っていた
ほうが、面白い使い方ができるものだ。研究すべし!